〔第1回 想いを形にするセミナー〕アジルアソシエイツ野町様講演録

正直、今、会社を作って3年半ぐらいなるんですけれども、一般的な意味で成功しているかというとまだまだだと思っています。

タイトルの『日系で学び、外資で学び、独立する方法』とありますが、すげぇかっこよすぎだと思います。ただ、会社を立ち上げるまで6社目なんですね。結構仕事はかわっています。まぁ、気づいたら会社を立ち上げていましたよ、という感じですね。ですから計画を立ててやってきたというわけではないんですよ。


今アジルアソシエイツという会社を立ち上げて経営しています。購買・調達にフォーカスした、日本でもユニークな存在だと思っています。実務がわかっていて、各種プロジェクトを立ち上げたメンバーが多いのが強みです。コンサルタント業務と、アウトソーシング、IT導入、あとは購買のコミュニティをやっています。

最近転職することがなくなっちゃって、会社をつくっちゃったので、履歴書を書くことがなくなったんですね。で、あらためて考えると、85年3月に慶応義塾大学経済学部を卒業しています。その頃の世の中は、まだ成長期の最後あたりで、基本的には終身雇用で、就職というより就社っていうかんじでした。どこかに入って一生勤め上げる、と私もそう思っていました。 クリエイティブだとか変革していくというよりも、先輩たちのやり方を引き継ぐことが、自分たちの役割なんだって思って会社に入りました。

最初に入ったのは日野自動車で、原価管理や購買をやりました。今考えると、現在の経済状況のきっかけになったのはプラザ合意なんですね。85年の9月に、日本の経済はグローバルの一員になったんじゃないかな、と思います。円高が加速して、円高不況になって、騒いでいました。ただ86年くらいから内需の拡大に取組んできました。これが91年までのバブル経済になっていくんですね。今思えば暮らしにくかったですね。そのころ、購買でモノを買っていたんですけれど、仕事を受けてくれないんですよ。発注すると、結構頭を下げて『頼むから仕事やってくれ』っていう世界です。今考えるとヘンな世界です。

その後、6年くらい勤務し、日本経済研究センターにいって、マクロ経済の予測をやっていました。行ったらバブルが崩壊しました。そして戻って、事業開発部で新規事業の立ち上げをやっていたんです。このころのキーワードは『価格破壊』でダイエーがすごい勢いでした。

そして95年の10月、矢矧コンサルタントというところに入社しました。ここは戦略系のコンサル会社です。入り、2年くらい仕事をしました。このころ円は80円切っているんですよ。そして98年くらいに日本アーンスト&ヤングコンサルティングに入社しました。ここは業務系のコンサルティングですね。このとき初めて外資に初めて入ったんです。このころ日産自動車が、経営危機に陥り、ルノーと提携する等、経済環境は最悪でしたね。このころの時代に、私が働き始めたときに比べてスピード感覚が10倍くらいになったんじゃないでしょうか。

そして99年にGEキャピタルに入社しました。そこでコンサルではなく、ソーシング、購買の立ち上げをやっていまいした。ネットベンチャーが流行っていまして、『すごい時代だなぁ』と。時価総額がたいへんなことになっていて、インターネット調達に興味を持ち、フロントライン・ドット・ジェーピーに入社しました。ネット系のベンチャーです。コンサルとかwebサイト構築とかやっていて、入社したときにネットバブルが崩壊しました。2001年です。この会社は2002年に事業清算しました。そして、今の会社を設立したんです。

なぜ世の中の出来事を同時に説明しているかって説明します。私は、何度も転職しているので、転職に対する抵抗感が全くないんですよ。で、自由なのがいい。だから自分がやりたいことをやっていくんですね。くくりたくはないんですが、そのときどきの経済状況とか世の中の流れが、世代に影響を及ぼすんじゃないかって思っています。

私の就職する頃は、メーカーに行く奴なんてほとんどいなかったですね。ほとんどが金融でした。就職人気ランキングなんて、以前は『公務員』が上位になっていて、『なんだこりゃ』みたいな、ね。今はトヨタはすごいんだけれど、私のころはそんなに皆が入りたいような感じの企業じゃなかったですね。やっぱりそのときどきで強い企業が上位に入っている。

私は、世代をくくるのは嫌いなんですが、やっぱり傾向はあるなと思っています。

(1)まず私たちの世代。40代前半くらいですね。ここの世代っていうのは、先輩のやりかたを必死で追いかけていたら、急に『なんか変革してみろ』っていわれてゼイゼイしながらやってる。おかしな話で、就職したときは先輩のとおりやればいいって思ってたけど、いきなりバブル後はそういう状況じゃなくなった。翻弄された20年、という感じですね。

(2)30代中~後半は、バブル崩壊直後くらいに入ってきています。この世代と会社を立ち上げたりしましたが、めちゃくちゃしっかりしている。学生時代から勉強していて、短期間で『私はこの世界で生きていく』という明確なものを持っている。しっかりしているけど、反面打たれ弱いなぁ、という印象を持っています。もうちょっといいかげんに生きればいいのになぁ、と。

(3)20代の後半から30代の前半は、しっかりしているけれど、ネットバブルの崩壊による挫折も経験しています。リスク回避能力は高いです。

実は父親だとか家族関係。こういうものが影響しているんじゃないかと。私の父親は高度成長期の人で、60まで勤めて、リタイアという風に。だけど今の世代の人って、父親世代の会社の状況が悪くなってリストラだとか多いんじゃないでしょうか。そういう人たちに急に『リスク飲め』っていわれてもムリでしょう、みたいな。そういう周りの環境が世代をつくってるんじゃないか、と思います。
最初、私も転職するときは悩みました。このままどうなるんだろうって。何か違うんじゃないかって思ってましたね。あと現状を否定したいって気持ちもありました。最初のときは給料もすごく安かったですから。コンサルってなんか憧れていたのもありましたし。

このときに、一つ忘れられないことがありました。北陸に光岡自動車っていう会社があるんですね。もともとは輸入車の並行輸入・販売会社なんですけど、自分でクルマ作っちゃたんですよ。クルマってレギュレーションが厳しくて、例えば野町自動車なんて作ろうとおもったら、すごく難しいんですよ。認証実験も通らなきゃいけない。たまたま、光岡自動車の社長と話す機会があったんですね。20くらい上の方ですね。隣に私の上司がいましたけれど、『我々の世代っていうのは、一歩を踏み出す勇気があるんだよね。逆に何がおこるか分からないけれども、一歩を踏み出せるんだよね。今の若い人はそれがないんだよね』って私を見ながらいうわけです。そっかぁ、この人たちはすごいなぁ、と思いまして、とにかく一歩を踏み出す勇気なんだなって。

とにかく何かを始めなきゃなんにもならないよって。

1回目の転職は悩みましたけど、2回目からはほとんど悩まなかったですね。逆に新しい環境で新しいことやるってのは楽しいなぁって。それにまとまった休みがとれる。これって大切なんだな、と。機会があれば、どんどん。基本的にはその会社で何をやりたいかっていうのがあって、それを達成できたかできていないかですね。達成できたんであれば、次のところでやっていこうと。

自分のやりたいことを、自分の思ったとおりできればいいなぁ、と。

フロントライン・ドット・ジェーピーのときは初めての挫折でしたねぇ、これも色々勉強しました。優秀な人はめちゃくちゃいるんですけれど、活かしきれてないんですよ。そういう状況をみちゃったんです。会社って3つの力が競争優位の源泉だと私は考えますけど、戦略の力、仕組みの力、人の力なんです。人の力って会社の競争力に影響与えるんだな、と思ったんです。成長の源泉は人の力にあるんだなって。そしてそれを育むカルチャー。それができなかったんでつぶれちゃったんですね。

起業したときも別に全然かっこよくないですよ。だけど、とりあえず『ダメだったらやめればいいよね』っていう感じですね。ただ、理念は共有しないといけないね。私の理想の会社って、やりたいことがやれて、言いたいことが言えて、そこそこ儲かる。それだけ満たしていればあとは何やってもいいんですね。社員に対して求めることは、儲けさせてよじゃなくて、どういう人間になりたい!ってのがまずあって、それを実現するためにこの会社を使ってよってことなんです。

何をやるかじゃなくって、理想の会社をつくりたいっていう気持ちでいまやっているってとこがありますね。理念を共有しながらどこまで会社を運営できるのかなってことが一番興味深い点ですね。

最後にみなさんへのメッセージです。
いろんな状況の中で生活なさっているんだと思うんですけど、企業の盛衰は想像を絶したスピードです。私は、世の中の流れに影響されたくないんですよ。変革を待つんじゃなくて、自分から変革を起こさなきゃダメなんですよ。そっちの方が私は楽しいですね。

それと、私は色んな人との会話の中で、成長していくのが楽しいんですね。人間の成長って、常に意識してないとダメになっちゃうんですね。『伸びしろ』っていうんだけど、常にその伸びしろを持っときましょうよっていう。

あとは機会を大切にしましょう、ってことですね。なんかあって迷ったときはやっぱり機会を大切にするってことじゃないかと思いますね。

本当に最後ですが、ジャックウェルチがこういうことをいっています。一番好きな言葉なんですけれど。
『自分の人生は自分でコントロールしなさい。さもなければ、他人に引っ掻き回されるぞ』って。

自分で自分のキャリアを育てていくわけですけれど、世の中とか他人とかじゃなくて、自分としてどうありたいかを持って考えていくしかないんだと思うんです。私もこの先わからないけど、逆にわからないから楽しいということでもあります。

これで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。